タルコフスキー
 旧ソ連のタルコフスキー監督は8本の映画と2本の共同作品'今日は外出許可ではない'('59)、'旅の時間'('82)を作っている。そして忘れてはならないのは'サクリファイス'、'ノスタルジア'の製作過程を撮った重厚な2作のドキュメンタリー、'タルコフスキー・ファイル in サクリファイス'、'タルコフスキー ・ファイルin ノスタルジア'がある。初期3本('ローラーとバイオリン'、'僕の村は戦場だった'、'アンドレイ・ルブリョフ')はまだ見ていないのだが、この5本を選ぶにあたって実はタルコフスキー作品で埋めてしまってもよかったのだがそれでは全くもってつまらない。
 で、とりあえず1本だけを選ぶことにしたら迷いに迷ってしょうがなかったのだ。1972年の'惑星ソラリス'、1975年'鏡'、1979年'ストーカー'、1983年'ノスタルジア'、1986年'サクリファイス'。この5作品のうち何かの賞を受賞していないのは'鏡'と'ストーカー'である。(初期3本も何らかの賞をもらっている。)

<'ローラーとバイオリン'は61年ニューヨーク国際学生映画コンクール第1位、'僕の村は戦場だった'は62年ヴェネチア映画祭グランプリ、サンフランシスコ映画祭監督賞、'アンドレイ・ルブリョフ'は69年カンヌ映画祭国際映画批評家賞、'惑星ソラリス'は72年カンヌ映画祭審査員特別賞、'ノスタルジア'は83年 カンヌ映画祭創造大賞、国際映画批評家賞、86年カンヌ映画祭審査員特別大賞、国際映画批評家賞、エキュメニック賞、芸術特別貢献賞>

 結局、カンヌ映画祭で上映中にストのため停電となってしまって何の賞ももらえなかった不遇な傑作'ストーカー'を選ばせてもらった。'ゾーン'と呼ばれる忽然と出現した禁断の地帯の中に、どんな望みをも叶えるという'部屋'があるという。ストーカー(密猟者)と呼ばれる案内人、作家と物理学者がゾーン内へ侵入し緊迫した'旅'に出かけていく。
 この作品 2時間40分という長さなのだが、実際そのゾーン内での'旅'では劇的なことは起こらず、ひたひたと物語が進んでいく。その全く長さを感じさせない緊迫した演出というのは見事としか言いようがない。これは、一見肉体労働者か政治思想犯を思わせるストーカーを演じるアレクサンドル・カイダノフスキーの絶望に満ちた苦渋の表情、そして語り出される音声と語り口による影響が大きい。(彼は牢獄に入っていたことがあり、また、彼の家には膨大な量の書物があることから判断すると多分思想犯であると思うが。)
 また、作家と教授による、社会や芸術、そして精神に対するさまざまな問題提起を投げかける会話のやりとりも重要なファクターとなっている。
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